印刷業をやっていて、良かったなと思うことは……。
今日はあまり時間がとれないので、ちょっとした裏話を書いてみようと思います。
どの業界にも裏話はあるもので、とくに業界ならではのラッキー☆なこともあります。
印刷業でお得なことと言えば、
- 雑誌や書籍が早く手に入る!
- 一般発売前に情報が入手できる!
- 無料で手に入る!
なんてことがあります。
あ! もちろん、毎回かならずという話ではなくて、あくまで運がよければの話です。
印刷物は、得意先から発注されたのよりも多めに作って、余った分はサンプルとして扱われます。もちろんサンプルにはサンプルの用途があるのですが、社内に余っているケースもままあるのです。そういうものを、社内でもらえることがあるんですね。
雑誌や書籍も、発売日より前にはすでに刷り上がっているわけですから、当然社内にあります。発売前なので大変な貴重品扱いですが、担当者にお願いすれば、こっそりサンプルをいただけちゃうこともあります。
また印刷物に掲載される情報は、版下作成時から社内で取り扱われています。数週間先に発売予定の漫画のストーリーだって、自分が担当していれば当然目に入ってきます。
内容を外に漏らせば大問題!ですが、自分の心の中だけにおさめて、ちょっと周りに優越感!という特権はあるわけです。
私が毎年楽しみにしているのは、カレンダーかな。
某有名画家のカレンダーを自社で受注していて、それを年末に1部もらって帰るのが恒例になっています。カレンダーは無料配布される種類のものもあるのですが、私がもらっているそのカレンダーは一般販売されている、れっきとした売り物なので、お得気分です。これぞ印刷会社社員の特権なり〜♪
あとは毎月買っていた雑誌を一時期もらっていたことがありました。
その雑誌を買い始めた当初から自社の受注品だということは知っていたのですが、ツテがないので毎月購入をしていたんです。しばらくして、仕事でかかわった人に偶然その雑誌を読んでいる話をしたら、翌月から雑誌が私の席に届くようになりました。おおおぉぉ! そんなつもりで言ったんじゃなかっただけに、ラッキー☆でした。
ちなみにその雑誌、いつのまにか届かなくなっちゃったんですけどね……。残念です。(笑)
雑誌や書籍はたいていいちばん後ろに印刷会社の名前が記載されているので、チェックしてみるといいです。社内でつくっていれば、もしかしてタダでもらえちゃうかも?!
ま、社員なら誰でも簡単に手に入るわけじゃなくて、ツテがないと全然無理なんですけどねー。
(いろんな人と仲良くしておけば、いつかいいことあるかも!なぁんて♪)
印刷機をまわすのは重労働? でも、けっこう収入はいいらしい。
下阪され、刷版ができあがり、今度こそ印刷スタートです。
印刷に必要なものは、だいたいこんな感じです。
【 印刷に必要なモノ 】
みなさんが家のプリンターで使うものと大差ありませんね。それぞれが専門のもの(業者用)になるだけで、原理は同じです。
しかし! そんななかで見慣れないものがあるはずです。
「校了紙」って、なに?
校了紙は、営業が得意先とやり取りをして、校了を得た原稿(版下)です。通常、得意先の捺印かサインが、日付とともに記入されています。
誰が、いつ、校了と判断したのかがわかるようになっています。
何故そんなものが必要なのかといえば、それが製品の見た目見本だからです。基本的に製品は、この校了紙にある内容と同じように製造されます。
得意先は「これでOK!」と納得し、「これと同じにつくってください」と注文してきているのです。ですから、製造現場ではそれと同じにつくる必要があります。
またあってはならないことですが、万が一、製版でミスがあった場合にも、校了紙と製品を見比べることでそのミスを検出することができます。実際に刷り上がった製品と校了紙で異なる部分があった場合、間違っているのは製品のほうです。なぜなら、得意先が求めてるのは校了紙の内容だからです。
そんなわけで、製造現場では校了紙が必需品です。
さて、印刷現場の人は何をするのでしょう。
印刷機をまわしたことがないので、半分想像で書いていますが、おおかたあっていると思います。適当ですみません。順番は本当に適当です。怒らないでください。だって、印刷機まわしたことがないんだもの。*1
大きなインキの缶を動かしたり、大きな用紙を運んだり、重労働の印象があります。しかし、設備の整った会社になると、インキも用紙も自動で装填される場合もあります。その場合は人間による重労働なんて、ほとんどありません。
入社予定の会社で工場見学ができる環境ならば、ぜひ見学してみるとよいでしょう。工場見学、いま流行っているみたいですしね。
ところで、製造業の生産現場といえば、つきものなのが「夜勤」です。印刷業も例外ではありません。
機械は動かしてなんぼですから、少しでも多く動かします。
たいていの場合、2交代もしくは3交代での勤務となるでしょう。
毎朝わたしたちが出勤するのとすれ違いに、工場から出てくる夜勤明けの人たち……。どうもお疲れ様です。
昼夜逆転になるわけですから、楽であるはずがありません。しかしそんな夜勤にも、メリットはあります。
ずばり、夜勤手当がつく!
そんなことかよ、と思うなかれ。ちょっとびっくりするくらいの手当てがもらえるケースもあるようです。
ウチの会社で聞いた話では、若手でも新車を買えるくらい貯金できるそうですよ。なかには、残業代がつかない管理職よりよっぽど稼げる!と言う人までいるくらいです。
まあ、忙しくて使う暇もないって話も聞きましたけど……。
というわけで、若いうちにがっつり稼ぎたいのなら、夜勤のある職業は魅力的かもしれません。
※ あくまで噂なので、真偽のほどは各会社の待遇をご確認くださいませ。あしからず。
*1:余談ですが、私の会社では営業担当も製造現場での研修があります。印刷機も実際にあつかって、印刷の製造工程を体験することができます。しかし、筆者は事情があってその研修を受けることができませんでした。大変惜しいことをしたと思っています。
下版、そしていよいよ印刷へ。
さて、製版工程でつくられた原版が校了となると、いよいよ印刷スタートです。
しかしその前に、前回でもすこし触れたように「刷版」という印刷用のハンコがつくられます。これを「下版」と呼びます。
アナログ製版の場合には、原版をもとに刷版がつくられます。
デジタル製版の場合には、版下データから刷版がつくられます。
刷版の形態は、印刷の方式により異なります。
つまり、刷版をつくる時点では、すでにこの製品が「どの印刷方式で」つくるのかが決まっていなければなりません。
どの印刷方式でつくるのかは、
- 製品の特性
- 製品の形状
- 印刷機械のスケジュール
上記のような要素をふまえて決められます。
具体的には……
- 写真をふんだんに使用していて、美しさや精細が求められる印刷物なのか?
- 大量部数、短納期で、早さがいちばんに求められている印刷物なのか?
- 環境配慮が重要で、化学物質の排出を最小限に抑えた印刷方式を指定されているのか?
- 特殊なサイズの仕上がりを求められていて、それに対応可能な加工機はどれなのか? その加工機を使うには、どの印刷機で印刷する必要があるのか?
こうしたことを考慮しながら、どの仕事をどの機械で作業するのか、割り振っていかねばなりません。
割り振りには、自社の機械をすべて熟知し、また様々な製品の特性を理解する必要があります。そのため、そうした知識を持つ、仕事の割り振りを専門に行う担当者が、それをおこないます。
自社の製品を持ち、同じ製品を大量に作り続けるような製造業では、工場のスケジュールは年単位でしょう。
しかし、印刷業はそうはいきません。今日つくるものと明日つくるものは、まったくちがうのです。もちろん、週刊誌・月刊誌などのていき刊行物はありますが、それは全体の一部にすぎません。
ですから、スケジュールを管理する仕事は、毎日毎日発生します。
今日はどこで何をつくるのか?
自分が考えた通りのスケジュールで、工場全体がうごいていくのです。
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印刷物の製造工程で、いったい何をするのか? ―― 製版編
さて、組版で完成した版下は、次に製版工程に回されます。
製版とは、印刷するためのハンコをつくる工程のことです。
印刷用のハンコは2段階に分かれます。
【 印刷するためのハンコをつくるには 】
- 原版 刷版をつくるためのフィルム。ネガとポジがある。
- 刷版 実際に印刷をするハンコ
原版とはようするに、ハンコのためのハンコです。
版下から直接刷版を作ることができないので、まずは原版をつくって、それから刷版をつくる、という工程が踏まれます。
この原版をつくる作業のことを、製版と呼びます。
製版では、完成した版下の写真を撮り、それをフィルムに焼き付ける作業をおこないます。フィルムの現像には化学薬品を用います。
また、製版でつくられたフィルムの校正には、青焼き、または清刷が用いられます。どちらも印刷前の最終確認となり、ここで組版上の間違いが発見されると、もう一度組版からやり直しをおこないます。
しかし近年では技術が進歩して、原版をつくらなくても、版下のデータから直接刷版をつくることができるようになりました。これを、CTP(Computer to Plate)と呼びます。
これまでのアナログ製版では、フィルムを焼くために現像液や定着液を使っていました。またフィルムも消費します。そうした環境負荷のかかることを削減するという意味でも、(作業短縮だけでなく)CTPは優れた技術ということができます。
正直なところ、私が印刷会社に入社したしたときにはすでにCTPが一般的になっていたため、製版の工程を見る機会はほとんどありませんでした。いまではもう、アナログ製版のための設備はなくなりつつあります。
なので、今後印刷会社に入社される方も、製版工程にかかわる機械はそうそうないのではないかと思います。
印刷物の製造工程で、いったい何をするのか? ―― 組版編
私は営業出身なので、営業についてならまだまだ書きたいことがヤマのようにあるのですが、それはまた後日にとっておきたいと思います。
続いては、製造部門の説明をしていきましょう。
製造業の要である製造。
印刷業ではいくつかの工程に分かれています。
【 印刷の製造工程 】
- 組版 印刷のレイアウトをつくる
- 製版 印刷の版をつくる
- 印刷 印刷をする
- 加工 印刷物を加工する(製本など)
それぞれ専用の機械があり、専門的な技術を身につけた作業者が製造にあたります。
では、それぞれの工程をくわしく見ていきましょう。
まずは組版からです。
- 組版とはなにか?
組版とは、得意先から営業が受け取った原稿をもとに、印刷用のレイアウトを作成することです。
以前は活字を組んで版をつくっていたため、このように呼ばれています。しかし現在では、デジタルデータでのレイアウト作成が一般的です。
使用する機械は一般的なPCで、レイアウトソフト*1を用いて作成します。
組版でつくられるレイアウト原稿は「版下」と呼ばれ、この版下が実際の印刷物の原稿になります。
営業の説明で登場した「校正」は、この組版の段階の作業です。
まず、得意先から受け取った原稿をもとに版下をつくります。この、最初につくった版下を「初校」と呼びます。
初校を得意先に提出し、内容の確認をしてもらいます。そして、修正したい箇所に赤字を書き込んで戻してもらいます。
赤字入れされた初校をもとにつくった版下は「再校」と呼びます。再校を得意先に提出し、再び得意先の確認を受けます。以下、三校、四校……と続きます。
【 校正の流れ 】
以下、校了まで同じ
このような流れを繰り返し、得意先が 「もう直さなくてOK!」 と納得するまで、何度でも校正は続きます。
この 「直さなくてOK!」 となることを、「校了」と呼びます。版下の完成です。
- 組版で大事なこと
通常、組版の作業者は得意先と対面することがありません。
ですから受け取った原稿、または戻された版下に書き込まれた赤字が、得られる情報のすべてになります。
その情報をもとに、いかにして「得意先の希望通りの成果物をつくるか」が重要です。
相手の意図をくみ取る能力が必要といえるでしょう。
また、小さな赤字も漏らさず拾い上げる注意力が要求されます。
どんな箇所にどんな赤字が入ってくるのかは、受け取ってみるまでわかりません。
受け取る原稿に同じものは2度とないのです。
いつも新しい環境での作業、ともいえます。
もちろん、修正漏れのないように検査の体制が整えられている場合もありますが、
まずは赤字をもとに修正する作業者が間違えないこと!
それがもっとも大切です。
*1:通常よく使用されるのは、Adobe社が提供する、In Design、Illustrator、Photo Shopなど。
印刷営業は、プロジェクトマネージャーなのだ!
新しい仕事を取ってくるだけが営業の仕事じゃない!
というわけで、今回は営業の仕事の流れを簡単に説明していきます。
【 印刷営業の仕事の流れ 】
- 新規開拓 新しい得意先を獲得する
- 見積提出 見積を作成し、提出する
- 受注 製品を受注する
- 入稿 得意先から原稿を受領する
- 校正 校正紙を提出し、得意先から赤字をもらう
- 校了 印刷する内容を確定する
- 製造指示 工場に製造を指示する
- 納品指示 輸送部門に納品予定を指示する
- 納品 (場合により)納品に立ち会う
- 売上計上 納品を確認し、売上げを計上する
- 入金確認 得意先からの入金を確認する
おおまかな流れとしては、こんな感じです。
営業さんが意外といろんなことをしているのだ、ということがおわかりいただけましたか?
とくに気が付きにくいのは、最後の入金確認でしょうか。
営業は、その得意先を担当するのが自分である以上、責任を持たねばなりません。仕事をとってきたのですから、最後まで責任は営業にあります。ですから入金されたことを確認するまでが営業の仕事ですし、万が一入金がなかった場合にはその催促をするのも営業の仕事になります。
そして印刷営業の最大の特徴は、入稿〜校正〜校了と、製造指示です。
印刷物は、得意先から受注してもすぐには印刷できません。どのような内容の印刷物にするのか、そのデザインを何度も確認してから実際の製造にあたります。
何故なら、その製品は常に「オンリーワン」の製品だからです。
印刷物には、何度も同じものを作るということが基本的にはありません。場合によっては「再版」と呼ばれる、同じものをつくる作業もありますが、通常は「そのとき初めてつくるもの」「いままでこの世にはなかったもの」をつくることになります。
ですから、製造のまえに「どんなものをつくるのか」を得意先とよく確認してから製造に着手する必要があります。それが、校正作業です。
さらに社内で「どんなものをつくるのか」についての情報を持っているのは、営業だけです。得意先との交渉は営業がしますから、得意先がどんなものをつくりたいのかを知っているのは、営業だけなのです。
ですから、営業はその情報を工場に伝えなければなりません。それが「製造指示」になります。
得意先から要望を受け取り、それを形にして得意先に納める。
その最初から最後までをすべて把握し、管理する。そうして製品製造を進行していくのが営業の仕事です。
一つの製品をプロジェクトに見立てるのなら、営業はさながらプロジェクトマネージャーとしての位置に立っていると言えるでしょう。
営業が受注してから、製品をつくるのが印刷業なのです。
前回示した5つの部門のうち、まずは営業について説明していきます。
仕事の流れの順を追って、入稿から説明したほうがわかりやすいでしょうから、製造業の要である製造部門は営業のあとで説明したいと思います。
さて、営業職と聞いて、アナタは何を思い浮かべますか?
一般的な営業職というと、より多くの製品を販売して、営業目標(売上目標)を達成するというものを想像するのではないでしょうか。
親戚に自動車会社に入社した人がいると、親族中が自動車を購入したり、または知人に保険会社の人がいて、同窓生が手当たり次第に保険の勧誘を受けたり、といった話もよく聞きますね。 B to C *1 の製品ではよくある光景だと思われます。
しかし、印刷営業はそれらとは少々おもむきが違います。
なぜなら、前にも説明した通り、印刷会社には自社製品がないのです。
ですから自社製品をたくさんの相手に売る、ということにはなりません。
そもそも、印刷は受注産業です。相手から依頼を受けて、そこではじめて製品を製造するすることができるのです。
- 一般的な製造業
製造した製品がある → 営業が製品を売る
- 印刷業
営業が仕事を受注する → 製品を製造する
このように書くとはっきりわかりますが、通常の製造業と印刷業では、順番が逆転しています。
というわけで、最初にも書いた通り、印刷会社では製造より先に営業がその役割を果たすことになります。
では、印刷営業の仕事はいったい何か?
もう、おわかりですね。
印刷営業の仕事は、より多くの得意先から、より多くの仕事を受注することです。
営業が仕事を取ってこなければ、製造はすることがなくなってしまうのですから!
しかし……
実は、印刷営業の仕事はそれだけではありません。
っていうか、仕事を取ってくるだけだったらいいんですけど、ただ受注すればいいっていうだけじゃないんですよねー。
次回はそのへんの説明をしていきます。