印刷会社でできる仕事って、具体的に何か?

これまでの説明で、印刷会社がどんな仕事をしているのか、なんとなくおわかりいただけたのではないかと思います。
では実際、アナタが印刷会社で働いたとき、どんな仕事ができるのでしょう?
まずは、印刷会社の組織構造の面から説明していきます。

【印刷会社の主な構成】

  • 製造部門  製品を製造する
  • 技術部門  技術開発をおこなう
  • 管理部門  会社のマネジメントをする
  • 営業部門  仕事を受注する
  • 輸送部門  製品を輸送して納品する

上記が、印刷会社を構成する、5つの枠組みです。
これはおそらく印刷会社だけではなく、製造業全般にいえる構造だと思われます。この5つがあってはじめて、製造業として成り立ちます。
ただし、このうち「輸送部門」については、外部に委託しているケースも多いかもしれません。ほかの4つと違って、社内にどうしても設置しなければならないものではないからです。

というわけで、印刷会社で働く場合には、上の5つの部門の中のいずれか1つでアナタも働くことになります。

就職・転職のときの募集が「営業職」である場合、「営業部門」で働くことになるでしょう。また「印刷機械オペレータ募集」であったなら、工場で印刷機をオペレーションする「製造部門」への配属です。
新卒で就職する場合には、具体的な職種での募集でないケースも多いでしょう。その場合には、実際に入社してから、どの部門の配属になるのか面談や希望調査のうえで決定することになります。

では次回から、上で示した5つの各部門でどんな仕事が待っているのか?
そのあたりを説明していきたいと思います。



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印刷業界で転職が多いのは、スペシャリストが多いから!(かもしれない)

比較的、転職が多いことで知られる印刷業界。
体力仕事だからとか、労働量の割に賃金が低いからとか、いろいろとネガティブなことも言われていますが、本当でしょうか?
たしかにそれらも理由のひとつにはなっていると考えられます。しかし、そればかりではない!というのが、私の意見です。

これまで見てきたように、印刷業界は工程ごとに分業がなされ、各工程の担当者はその技術を身につけて働いています。いわば、その道のスペシャリストです。そしてその技術や経験は、自分の会社だけではなく、他社でも十分に通用する場合も多いのです。
ですから自分の持つ技術や経験をいかして、もっと良い環境で働きたい!と考える人も多いのだと思います。

実際、わたしの職場の中途採用者には、同業他社からの転職者が多くいました。なかには、業界大手と言われる印刷会社から転職してきた人もいます。
同じ印刷会社であっても、その会社の社風や文化、取扱製品、所有機材や技術、そして賃金その他の待遇など、千差万別です。自分が働きやすい環境で毎日を過ごすために、転職する人も多いのではないでしょうか。


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得意分野以外は、すべて外注すればいいのだ!

前の記事では、印刷業界では専門性に特化した企業が多く、業界内で分業の体制が敷かれていることを説明しました。
ひとつの工程だけを専門的におこなう。そうなると必然的に「自分ではできないこと」が、各会社ではたくさん出てきます。
印刷機しか持たない会社では、印刷用のハンコをつくることができませんし、印刷した紙を製本することもできません。
そうした「できないこと」は、当然べつの誰かにやってもらうことになります。

つまり、印刷業界では「外部委託」が当たり前の体制になっています。

外注(外部発注)が当たり前の世界ですので、本来は自分でできるはずのことも、ときには外注することがあります。コストやスケジュール、また所有している機械の都合などをふまえて、最善の策として外注が選ばれるケースもあるのです。

そんなわけなので、印刷会社同士での委託ということも起こりえます。
そうなると、普段はライバル企業であるにもかかわらず、その一方で互いに得意先同士でもあるという奇妙な関係が成り立つのです。

こうした外部委託が常態化している文化を背景に、「自分にできない仕事は、外部に委託すればいい!」という発想で、様々な依頼の受注が可能となっているのです。

委託先さえ見つけられれば、どんなものだってつくることができる! それが印刷会社の発想です。


分業だから、効率的。そして専門的!

さて、印刷会社を紹介するはずが、「印刷会社は印刷以外もいろいろやってるよ!」という説明が長くなってしまいました。それでは本筋に立ち返って、本来業務である印刷について説明していきましょう。

【印刷の仕事の流れ】

  1. 入稿   得意先から原稿を受ける
  2. 組版   原稿から印刷用のデザインを起こす
  3. 製版   デザインからハンコをつくる
  4. 印刷   ハンコとインキで製品を製造する
  5. 加工   折る、綴じる等の製本加工、ラミネート加工など
  6. 納品   製品を得意先に納める

おおまかな流れとしては、こんな感じです。
組版と製版は、プレス(印刷)の前工程ということから「プリプレス」とも呼ばれています。
各工程はそれぞれ専門的な技術が必要ですから、たいていの場合、工程ごとに部署を設けて別々の人たちが担当しています。

さらにいうならば、印刷業界ではこれらの工程ごとに会社があり、分業体制が敷かれています。組版だけをする会社、製版だけをする会社、印刷だけをする会社、加工だけをする会社、といった具合です。
ですから、前述のように1つの会社内で部署ごとに分業している例は、比較的大きな規模の会社ということができます。
また、大きな印刷会社であっても加工機を持っておらず、加工工程はすべて外部発注しているという例もあります。

どうしてそんなことになるの?!

それは、各工程ごとに特別な機械が必要だからです。そして機械さえあれば、その工程のあらゆる仕事を請け負うことができるからです。

たとえば、A4サイズの冊子を製本する場合、A社で印刷した紙を製本するのも、B社で印刷した紙を製本するのも、C社で印刷した紙を製本するのも、同じ製本機でおこなうことができます。印刷用紙のサイズには規格があって、どの会社もそのサイズの用紙に印刷するからです。
しかし、製本機では紙を印刷することはできません。印刷をするには、印刷機を用意する必要があります。そのためには、機械を買うお金や、機械を扱える技術を持った人を新たに雇うコストがかかってしまうのです。

そんなわけで、印刷業界には印刷機だけをもっている会社や、製本機だけを持っている会社が多く存在しています。

各会社はそれぞれ、特性のある機械を所有していて、専門的な技術を武器に仕事をしています。



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無関係に見えるものでも、実は印刷会社のテリトリーだったりするのは、何故か。

印刷会社は受注産業だから、頼まれればなんでもやっちゃうよ!
とはいうものの、実はまったく無関係の仕事ばかり受けているわけではありません。利益を創出することが使命である企業が、効率の悪い選択をするはずがないのです。

では、一見すると印刷会社の仕事ではなさそうなものでもやっている例があるのは何故なのでしょう?

あなたはいま、印刷会社の営業マンです。
自分の得意先として、A大学を担当しています。
受注品は、「学生証」です。

ここから広がる提案営業の可能性

  • この学生証を、身分証明だけでなく、別のサービスに活用しませんか?
  • 講義の出欠確認で利用するためのシステムを導入するのは?
  • 履修登録システムで利用するのは?
  • 図書館の入退出や貸し出し記録で利用するのは?
  • コピーカードとしての機能追加は?
  • 学食での決済可能な電子マネーの導入は?
  • 学生寮の入退出管理導入は?

というわけで、ひとつの受注品から様々な可能性が考えられるのです。

上記は実際に実現しているものも多いですし、私が想像で書いた部分もあります。
こうした周辺需要・関係需要を掘り起こして新たに受注することで、仕事を増やすことができるのです。

また、それだけではありません。周辺を抑えることにより、もともとの受注品を今後も自社に発注してもらえる可能性を高くすることができます。
学生証だけを毎年作っているだけでは、いつかもっと安く製造できる会社が現れて、その仕事を奪われてしまうかもしれません。しかしもし、学生証を使った別のサービスも提供していたら、別の会社に乗り換えられてしまうリスクが小さくなるのです。なぜなら、学生証だけを作ることのできる会社、周辺サービスだけを提供できる会社はたくさんありますが、そのどちらも提供できる会社は少ないからです。

このようにして、印刷会社はそれぞれに「つよみ」「独自性」を発揮しながら手がける製品を拡大しているケースが多いのです。



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頼まれたものをつくるのが、印刷会社の仕事です。

前の2回で紹介した通り、幅広い製品を手がけて、頼まれればどんなものでもつくってしまうのが印刷会社。
実は、この「頼まれれば」というのが、大きなポイントです。

印刷会社は、頼まれたものをつくるのが仕事なのです。

どういうことかというと、印刷会社は基本的に「自社製品」がありません。ですから、自分の会社の製品をつくるということがないのです。そしてそのかわりに、他社の製品を頼まれて製造することになります。
少しわかりやすくするために、具体的な例を挙げてみましょう。

Aという印刷会社があります。

A社の得意先に、Bという出版社があります。

B社は、「週刊BBB」という週刊誌を発行しています。
【「週刊BBB」はB社の製品】

A社が、その「週刊BBB」を印刷しています。
【「週刊BBB」を製造しているのはA社】

このとき、上にも書いたように、週刊誌の発行者はあくまでもB社です。A社ではありません。つまりA社にとって、「週刊BBB」は自社製品ではないのです。
場合によって、次年度からB社が別の印刷会社に製造を依頼する可能性もあります。その場合には「週刊BBB」はA社とはまったく無関係になります。このことからも、「週刊BBB」はA社の製品でないということがわります。

印刷会社は、頼まれた他社の製品をつくるのが仕事なのです。

こうした頼まれたものをつくる仕事のことを、受注産業と呼びます。
印刷業は基本的に受注産業であり、他社の製造工程を請け負うことで成り立っています。

そして受注産業だからこそ、頼まれればどんな内容でも、自分の仕事にすることができるのです。


【頼まれれば、印刷会社はこんなこともしちゃうよ!(例)】

  • ノベルティグッズの制作
  • イベントの企画・運営
  • システムソリューション
  • 印刷物等のデザイン
  • コールセンター


あなたがいまやりたいと思っている仕事も、もしかしたら印刷会社で実現できるのかもしれません。



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印刷会社は、たとえばこんなモノをつくっています。

どんなものでもつくれちゃう、とは言っても、あまりに漠然としているので、もう少し具体的に例示してみましょう。
以下は、印刷会社の代表的な製品例です。


【印刷会社の製品(代表例)】

  • 書籍・出版物 (雑誌、コミック、文庫本、フリーマガジン etc.)
  • 商業印刷物 (カタログ、チラシ、パンフレット、伝票類 etc.)
  • カード・証券 (キャッシュカード、クレジットカード、交通ICカード、商品券 etc.)
  • パッケージ (紙パック、紙箱、プラスチックチューブ、ペットボトル etc.)
  • 建装材 (化粧板、化粧シート etc.)
  • システムソリューション (ポイントカードシステム、教育・研修システム、物流管理システム etc.)


取扱製品は多岐にわたりますが、わかりやすく代表的なものが上記になります。すこしはイメージできましたか?

「印刷」というと、どうしても「本」を思い浮かべがちですが、実際の印刷会社はこのようにいろいろなものを扱っています。意外なところでは、カード類や、チューブ、建装材も印刷会社の製品です。

そしてこうした製品たちは、さまざまな業界で幅広く使われています。
カタログひとつとってみても、通販会社のカタログだけではなく、自動車の製品カタログもありますし、百貨店のカタログかもしれませんし、ゲーム会社のカタログだってあり得ます。
カード類でも、銀行のキャッシュカードや金融会社のクレジットカードだけでなく、コンビニやスーパーで使えるポイントカード、大学の学生証などもあります。

つまり、印刷会社のお客様は実に様々なのです。仕事を通じて、いろいろな業界とかかわることができる!それは印刷会社ならではの面白さです。



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